「GS441524」製剤の注射で84日間治療後も再発し、CFNで完治したFIPの1例

【症例情報】

アビシニアン、避妊済みメス、10ヵ月齢、体重 2.2kg、体温 38.1℃(初回来院時時点)

【それまでの診療経過】

5ヵ月ほど前(5ヵ月齢時)に食欲元気の低下や、貧血、高グロブリン血症が見られ、FIPを発症しました。
神経症状は出ていませんでした。
84日間、「GS-441524」という商品名の注射薬(製造元不明)を84日間継続して治療終了しました。
注射薬は痛がっていたようです。
治療終了直後から食欲活性の低下が見られ、1ヵ月程で痙攣発作が生じ始め、右眼の瞳孔サイズが小さくなり、FIP再発が疑われました。
再度「GS441524」製剤の注射を始め3日が経過しましたが改善が悪い、とのことで当院を受診されました。GS製剤の注射を再開後も状態は悪化し、自力での摂食ができなくなり、強制的にフードを与えている状態でした。

かかりつけ様では、「GS441524」注射の再発率は30%程度、と言われていたそうです。
再発保証はありませんでした。

【当院での診療経過】

来院時、食欲元気の低下はありましたが、検査上の異常としては右眼の縮瞳のみ、それ以外には、血液検査やエコー検査等で異常はありませんでした。
治療に関しては相談の上で、CFN治療の内服から始めていくこととしました。治療開始時点の体重は2.2kgでした。

治療開始後翌日から元気、食欲が劇的に改善、右眼の縮瞳も改善しました。
その後も順調に回復し、84日間のCFN治療を完了しました。
治療終了予定日時点で体重は3.35kgに増え、状態安定しているため治療を終了しました。

治療終了後1年経過し、定期確認したところ、体重は3.9kgまで増加し、検査上も特に異常は認められませんでした。

【考察】

  • 一般的に「GS-4415124」という成分が、FIPに非常に有効ということがわかっています。
    ただし、同じ「GS-441524」を使用した製剤でも、実際は改善率や再発率に大きな違いがあることがわかります。
  • GS製剤の注射薬は、痛がることがあります。
    84日間継続して注射を打ち続けることが、ある程度ストレスになってしまう可能性があります。
  • 再発時は、初発時に無かった神経症状や眼の症状(右眼の縮瞳)が出たこと、再発時は「GS製剤」の注射が効かなかったことから、再発時は元々の重症度より悪くなってしまうことがある、ということがわかります。

【まとめ】

現在流通されているFIP治療薬には、再発保証の無いいわゆる「GS製剤」が、多く流通しています。
主成分が同じであれば、どの製剤も同じ効果が得られると思われがちですが、同じような成分でも実際には製品によって改善率や再発率に大きな違いがあることがわかります。

個人的には、再発保証を付与できない「GS製剤」は、再発率が高い可能性がある、と考えられると思います。
また、再発保証のある薬剤の中でも、CFNはデータ上最も高い効果が得られています。

GS製剤の注射を痛がるケースがあります。84日間継続しなくてはいけないGS製剤だと、84日間苦痛を感じてしまう可能性があります。
CFNも、注射は内服よりも即効性が高く、胃腸障害があっても効果が得られやすいことから、初期は数日注射を実施することがありますが、痛がることもあります。CFNは初期状態が悪く注射から始める場合であっても、状態がある程度改善した後に、数日で内服薬に変更していきます。

再発時に初発時より悪化する可能性がある事から、なるべく初回の治療で治しきることも重要だと考えられました。

現在のFIP治療に疑問などあれば、まずはご相談させて頂ければと思います。

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