モルヌピラビル治療を2回実施後も再発し、CFNで完治したFIPの1例

【症例情報】

アメリカンショートヘア、去勢済みオス、2才、体重 3.2kg、体温 39.3℃(初回来院時時点)

【診療経過】

10日前にかかりつけ病院様にてFIPと診断され、ステロイドと抗生剤を継続しましたが、改善しないとのことで来院されました。
検査の結果、貧血(HCT 27.0%)、高グロブリン血症(Glb:7.9)、黄疸(Bil 2.6)、腹腔内リンパ節の腫脹、両腎臓の腫大、少量腹水貯留が認められ、当院でもFIPと判断しました。

治療に関しては相談の上で、モルヌピラビル治療を行うこととしました。
ただし状態が悪かったため、最初の1週間だけCFN治療を併用しました。

治療開始後翌日から元気、食欲が劇的に改善、その後も順調に回復し、84日間のモルヌピラビル治療を完了しました。
1回目のモルヌピラビル治療終了時点では体重は3.74kgに増え、ごく軽度の高グロブリン血症(Glb:5.3)は残っていましたが、状態は安定しているため治療を終了しました。

治療終了後1週間後あたりから食欲活性の低下が見られ、その後ふらつき、痙攣発作も生じるようになりました。治療終了後2週間頃に再度来院されました。
神経障害があり、体重が3.42kgに減少、高グロブリン血症(Glb:6.0)が見られました。
FIP再発と診断し、飼い主様と相談の上でモルヌピラビル治療を再開しました。
神経障害などの重度の症状も見られていたため、初期4日間はCFNの注射を併用しました。

再発治療開始後すぐに状態は安定、モルヌピラビル単独治療に切り替え、モルヌピラビルとして再度84日間の投与を行い終了しました。
再発治療終了時点では体重は4.45kgに増え、血液検査上も正常値でした。

再発治療終了後10日後あたりから食欲活性の低下が見られ始めました。
この時は体重減少(4.32kg)や発熱(39.9℃)は見られましたが、その他には特徴的な所見はありませんでした。FIP再発と判断し、相談の上で、今回はCFN治療を84日間継続することとしました。
CFN治療開始後はすぐ順調に回復し、84日間のCFN治療終了後1年以上経過していますが、再発は認められていません。

【考察】

  • モルヌピラビル治療後、再発時に、神経症状という初診時より重篤度の高い症状が出ていたことから、再発する場合は初期症状より悪化する可能性があることがわかりました。
  • モルヌピラビル治療後に再発した場合は、同じモルヌピラビル治療では完治しにくい可能性が考えられました。
  • 2回目の再発時は食欲不振と発熱以外に特徴的な症状は無く、再発時の症状がFIP再発と、すぐ判断できないことがあることがわかります。
  • モルヌピラビルで再再発を生じた症例であっても、CFNにより完治に至らせることができました。薬剤により治療効果に違いがあることがわかります。

【まとめ】

現在FIP治療薬は様々な製品が市場に出回っていますが、再発保証を付与できるような、効果の高いFIP治療薬は少なく、中でも重篤度に関わらず全てのFIP症例に再発保証が付与できるのはCFNだけです。
当院ではFIP薬として、現在最も効果が高いと考えられているCFNを第一選択薬として取り扱っております。
またその費用も一般的な処方価格に比べ、再発保証のある薬剤としては国内で最も安く設定しております。
費用面でCFN治療を選択できない場合は、モルヌピラビルを提案しています。

おおまかなデータとして、当院では以下のような治療成績が得られています。

CFN改善率95%、再発率2%
モルヌピラビル改善率80-90%、再発率10-20%

また、モルヌピラビルはCFNに比べ、治療の反応が遅いことがありますので、重症度が高い場合の初期治療として、効果が不十分であることがあります。
モルヌピラビルも多くの場合は改善し、完治に至ることが多いですが、より状態が悪い場合や、金銭的に受け入れられる場合は、再発保証のあるCFNを推奨しております。
状態がそれほど悪くなければモルヌピラビル単独治療を選択したり、状態が悪くてもCFNで開始後にモルヌピラビルに変更する、という投与方法も可能です。ただし再発保証は、規定量のCFNを84日間継続した場合にのみ付与されます。

まずはご相談させて頂ければと思います。

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